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真夏の備忘録 前編【メヒコの衝撃】

去る真夏の8月29日に、出張のため久々に東京へ向かいました。

 

ビンテージ家具などを扱うインテリアショップから、来年春にPOP UPイベントのお話を

頂いたのでその視察と、お世話になった方に会うのが目的。

 

そこで2つほど気になる展覧会があり、せっかくなんで前乗りして観にいくことに。

 

一つは千葉の市原湖畔美術館で9/26まで開催されていた

「メヒコの衝撃」という企画展示。

 

千葉は成田か幕張しか行ったことがないので、少しワクワク。

 

JRの五井という駅で降り、小湊鉄道というローカル線に乗り換え。

しかし、ここで往復切符を買ってしまったのが運の尽き。

一両編成のレトロな車両。

年季ものの扇風機。でも冷房が効いていたような気がします。

 

 

前々日からの大雨の土砂のため、途中バスに乗り換える区間あり。

 

そしてまた鉄道に乗り換えて高滝駅まで。1時間ほどで到着。

 

なんとも長閑な光景。

 

千日草が咲き乱れる道沿いを歩き、20分。

 

この湖に出るまで人と全く会わず。

 

なんとか美術館に到着。まぁまぁ汗だくになりました。

 

革命家サパタに目がいく、コラージュされたチラシはなかなか秀逸。

 

メキシコに渡りその影響を受け、作品に反映させた美術家や映像作家などの企画展示。

 

錚々たるメンツを一堂に観覧できるとあり、遠路はるばるやってきました。

 

館内全て撮影OKなのはありがたく、スマフォに納めたので個人的な感想を記します。

 

(1) 北川民次

まず北川民次先生の版画作品から。

メキシコに14年滞在し、タスコで美術学校の校長もしていた

まさにメキシコの壁画運動を日本に伝えた人物。

 

しかし

 

ン、

ン ン、、、

 

並ぶ版画作品 (確か6,7点)は、どれも地元、愛知の瀬戸の風景を描いた作品…..

なんでやのん?? ポルケ?? (写真撮ってません)

 

唯一のメキシコを題材にした銅版画「タスコの裸婦」

 

あとは油彩のタブローが2点。どちらもタイトルにタスコの地名があります。

 

メヒコの昔話も大体メヒコあるあるで面白い著書。

 

 

(2)利根山光人

のっけからズッコケましたが、次は利根山光人先生のリトグラフ。

言わずと知れたメキシコの民芸世界や文化を日本に知らしめたお方。

「プリミティヴ」と題されたリトグラフ。

メキシコがモチーフなのかは不明。

 

こちらはの作品は「コロナ(8)」

ナンバリングされているので連作ではないかと思いますが1点のみ。

 

 

こちらは2つとも「太陽の神殿」とのタイトル。

上はなかなか大きな油彩作品。 下は氏が情熱を注いだマヤ遺跡の拓本。

これを観れるようにしていたのは面白い試み。並列に展示していたら良かったのに。

他の2点の拓本と並べての展示でした。

 

マヤの拓本は世田谷美術館が多く所蔵していて、もっと大きな拓本があります。

 

☝︎過去記事で少しだけ触れています。

 

1969年発行の大判本。なんと暮しの手帖社が発行。

 

当店の地下の書棚に資料がございます。

これによれば展示作品はパレンケ遺跡にある神殿跡だとか。

 

 

 

(3) 深沢幸雄

この方は存じなかったのですが、

銅版画作品をこの湖畔美術館や千葉県立美術館が多く所蔵しているようです。

なんでも1962年にメキシコに滞在し、銅版画の技術を伝達したとか。

すでにメキシコシティのサン・イデフォンソ大学の教授だったルイス・ニシザワも生徒だったそう。

 

「旗 2」

強烈な色彩。 ターコイズとオレンジ、コンストラストがモダン。

 

「アステカの旅」

 

「メリダの黄昏」 白壁と赤い屋根で統一された街並みは、確かに黄昏ます。

 

「ともしび」 十字架のモチーフに見えて、教会の光のイメージなのかも。

 

また1974年にメキシコへ再訪し、旅を重ね作品を製作。

以下はその時代の少しシュールな作品。

「影 (メヒコ)B」

 

「この遥かな遠い道」

 

「アシエンダの地下にて」

アシエンダは支配者階級の荘園のこと。

労働者が丸まっているかのような影が印象的。

「モクテスマの苦悩」

モクテスマ二世はアステカ王国最後の君主。

スペインからの征服者エルナン・コルテスに騙され王位を譲ろうとした、または

アステカ王国を滅亡させてしまった苦悩なのでしょうか。

 

どの作品も銅版画の卓越した技術と、時代を感じさせない

ビジュアルが素晴らしかったです。

タイトルも示唆があり面白い。

 

これは氏が編み出した、大判作品を量産するため版下を刃で削るメゾチント・ロボット? だそう。

 

 

(4) 河原 温

 

この方も知らずでした。日本国内のコンセプチャルアートの先駆者だったとか。

1962年から3年間メキシコに滞在。

68年に再訪した際にNY在住の友人のキュレーターに送り続けた絵葉書150枚。

 

“I GOT UP” と起床時間のスタンプだけがあるそうで、やり続けることに意味が

あったのか?

個人的にコンセプトだけの現代美術は好きではないので、あまり興味が湧きませんでした。

しかもメキシコで何をしてたのかも謎だそう。

 

絵葉書のメキシコシティの街並みが見れたのは良かったかな。

 

 

 

(5) 岡本 太郎

みんな大好きオカモトタロー。

渋谷にある「明日の神話」のレプリカ展示。

 

とメキシコへ旅した時の本人が撮影した写真の展示

 

 

写真はこの書籍に全て収められています。

当店の資料。これは岡本太郎関連施設で 現在でも購入できると思います。

 

言わずと知れたこの大きな壁画は、メキシコシティのホテルからの依頼で現地で制作。

本人の下絵をトレースして実際に画として描いたのが、前述したルイス・ニシザワと

オアハカ在住の竹田鎮三郎先生。

 

また青山の岡本太郎記念館には、大阪万博終了後にメキシコ館から譲り受けたという

大きな生命の樹があります。

 

施設HPから抜粋

 

こちらはブレてますが、太陽の塔の初期段階スケッチ。1967年と記しが。

トルーカのホテルの名が印字された紙に描かれ、メキシコ滞在時にその

構想を膨らませていったのがわかります。

その変遷は、万博公園の太陽の塔内部の見学ルートのエントランスに展示されています。

(ブレてるのは、オープン当時は撮影禁止だったのをコソっと撮ったから….すみません!

今は撮影OKだそう)

 

(6) 水木 しげる

 

1997年に2週間メキシコを旅した水木さん。

自身が監修を務めていた機関紙「怪」と紀行本に、その様子が詳細に記されています。

こちらも当店資料。図書館などでどうぞ。

 

前述した竹田先生はこの本でも紹介されています。

 

 

 

ということで、本人が買い漁った仮面が展示してあります。

しかし本でかなり大々的に紹介された重要な仮面はありませんでした….

 

以下は店主が2005年に撮影した水木さん所蔵の仮面。

「水木しげるの大妖怪博覧会」という百貨店でのエキシビジョン。

モレーリアで買ったというミチョアカンのディアブロ

 

 

これもモレーリアで買ったらしいウィチョールのビーズ仮面

 

「怪」の表紙にも使われたカラベラの陶芸品。プエブラ州マタモロスの初代アルフォンソ・カスティージョの作品のよう。

 

この3点はぜひ展示して欲しかったなと思います。なんで貸してもらえなかったんだろうか。

 

数点だけオアハカのアレブリヘスも展示されていました。90年代後半のまだ丁寧に作られている時代。

 

 

(7) スズキ コージ

おそらくこの展覧会のハイライトであろう、スズキ・コージズキン画伯の圧倒的な仕事量。

もう画伯のプチ回顧展と言っても差し支えなかったのでは。

 

本人のような等身大人形。

 

陽当たりの良い別室でライブペインティングをしたらしい”VIVA MEXICORAZON”

立体物もメキシコの民芸品のようで素敵です。

 

メキシコに8度も訪れている画伯の絵は、メキシコの混沌とした世界そのもの。

 

それゆえ店主は深く共感し、

長くコージズキンのファンであり、2003年に営んでいたメキシコ料理店が移転する際に

入り口と看板を描いて欲しいと、連絡してお願いしたことがあります。

 

当時はメールや電話ではなくファックスを送って、お願いしましたが

丁寧にファックスで返信が来ました(笑)

 

うる覚えですが渋さ知らズと一緒にドイツに行くので、時間的に難しいというお返事だったように思います。

 

何回聴いたかわからない名盤。ジャケはもちろんコージズキン。リリース当時のレーベルはナツメグ!

 

 

という感じで圧倒的に展示スペースを隅々まで支配。

 

ソカロの光景。これは初見。

しかし見ていくうちにイロイロ回想。

 

画伯は音楽や映画に関連したライブペインティングを長年ライフワークとしていて、

学生時代から結構見たことあるものが多く……

スズキコージ

 

便器に描いてるシリーズ初めて見ました。

数は圧巻でしたが、メキシコにそこまで関連してなかったような….気がしなくも……ナイ。

 

数年前から神戸に移住されたので、姫路や神戸で年に数回展覧会があります。

関東でこの大規模な展示は(それも過去ライブペインティング作品)もう見れないかもしれませんね。

 

 

(8) 小田 香

 

ドキュメント映画の旗手、小田さんは昨年「セノーテ」を公開。

店主も映画館で鑑賞しましたが、自分が水中で溺死しそうな不思議な感覚を覚えました。

3面スクリーンで流されていた  「DAY OF DEAD」

今年編集され発表した作品のようです。

ユカタン半島の死者の日にはあまり触れる機会がないので、なかなか興味深い。

コチニータ・ピビルの調理のため豚を丸々捌く。

 

儀式、海面(セノーテ)、人物と3面スクリーンそれぞれ異なる映像ですが、

音声はかなり考えられてミックスされている編集でした。

映画「セノーテ」もそうですが音響映像の側面が強い印象。

魅力的な借景。向こう側は何もない。

 

 

 

つらつらと書き出しましたが、

あっという間に見て回ってしまったので、2周目。

 

 

2階からもコージズキンの作品。

絵本「ブレーメンの音楽隊」は息子も愛読していました。

 

 

 

私見ですが、岡本太郎や水木しげるの展示内容は薄すぎるので、ネームバリューに

頼らず、現在メキシコで活動している日本人アーティストに焦点を当てても良かったのでは?

 

 

また展示点数が少ないので、それぞれの作品が選ばれた理由や

詳細なキャプションがあれば良かったのになと感じました。

千円で見れたというのはお得感ありますが、物足らなさがあったので

意外に高かった図録は購入せず。

 

 

そして外へ出ると灼熱….

 

 

パブリックアートのような作品も設置してあったり、レストランも併設され

遠方まで家族連れが結構来ていました。

 

この湖、人工だそうです。

 

また歩いて駅まで。到着は12時半ごろ。

 

しかしっ! なんと!次の上がり電車は2時すぎ!

 

行きがすんなり来れたので、ダイヤを調べていませんでした…..

 

仕方なくセブンイレブンでビール買って時間を潰そうとしましたが

イートインは閉鎖中。

 

無人の駅舎のベンチで飲みながら黄昏て、電車を待ちます。

 

暑い….

 

 

次回に続く。